トップ > エンターテイメント(エンタメ・イベント)全般ページトップ > 知的美人☆『ドーン』をレビュー
久しぶりに取り出して読み返した本があります。
昔から、平野さんの使う日本語の、クラシカルな雰囲気がとても好き。
10年後、いやもっと先になっても、彼の作品を手に取りたいと思うことでしょう。
本質を捉えているのだけどそのものずばりを描くわけではなくて、まるで心地よい襞のように、強すぎず弱すぎずしっとりと絡みついてくる表現の数々に、いつも、今まで震えたことのない身体と心と脳みその奥の方が震えるような感慨を受けます。
この作品『ドーン』は彼の作品の中では比較的読みやすい日本語で描かれています。
火星探訪記でもあり、米大統領選ドキュメントのようでもあり、
整形やID化が極度に進んだ未来社会が舞台となる映画の台本のようでもあり、
個人の精神状態が分裂するギリギリの状態を描いた恐怖小説でもあり、
個人と個人がすれ違う切ない恋愛小説でもある。
・・・とまぁ、エンターテイメント性満載の一作。
個人とはたくさんの分人の集まりである、とはもっともなのだけど、
たとえば恋人と向き合うとき。
自分の子供と向き合うとき。
「自分が最も大切なものですらそのすべては所有できないのか」と、
大切な人に問いかける姿は、あまりにも切ない。
所有したい、所有されたい、
所有されることへの恐怖、することの恐怖、
所有してもらえるだろうかという不安、できるだろうかという不安・・・・・
本作の象徴的な場面。
どうしようもない事実なのに
答えを出すことは、
やっぱり切ない。
さりあなさん
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